どんな業界においても、就職・採用に関わっているとよく耳にするのが「離職率」。離職率が高い職場は何らかの問題があり早期退職者が多く、職員が定着しない原因がある可能性が高いです。その職場の離職率を知ることは「働きやすい職場」or「働きにくい職場」を見分ける指標にもなりますね。
「離職率」に定義はない
実は、離職率の計算方法は定義があいまいで、法律等で決まった計算方法が定義されているわけではないんです。ですので、業界や企業によって算出方法が異なります。
一般的な離職率とは、「ある時点で在席していた職員数のうち、一定期間後に退職した人の割合」を数値化したもので、この「一定期間」には特に定義がありません。
よく使われる離職率の計算方法
1.新入職者が1年以内に退職した率
新人の1年以内の退職者数 ÷ 期初の新入職者数 × 100(%)
2.厚生労働省の雇用動向調査で使われている離職率の計算方法
その年の退職者数 ÷ 1月1日の常用労働者数 × 100(%)
※該当期内に途中入社した人数は含まない
3.一般企業で多く使われている離職率の計算方法
一定期間中の退職者数 ÷ 起算日に在籍していた人数 × 100(%)
※該当期内に途中入社した人数は含まない
「一定期間」に特に定義がないため、例えば、過去3年間の離職率を算出すると下記のようになります。
例1)3年前の4月1日の在籍人数が30人、3年間で6人が退職した場合の離職率。(年度の途中の入社数は除外して計算)
6人 ÷ 30人 × 100 = 20%
例2)これを期間1年で計算すると、離職率を低く見せることができます。
3年前の4月1日の在籍者で最初の1年間は1人しか辞めなかった場合、
1人 ÷ 30人 × 100 = 3.3%
となります。
意図的に離職率を低く計算することができますね。
看護師の離職率で一般的なのが「新人看護師の1年目の離職率」
多くの病院で採用されている離職率が、上記1.の新人ナース1年目の離職率です。この場合、新人ナースが入職して1年以内に何名退職したかで決まります。(4/1に入職した新人が翌年3/31までに退職した人数が対象となります。)
例えば、新入職者が100人で、1年以内に5人辞めれば、離職率は5%です。
新入職者が20人で、5人辞めたら、離職率は25%になります。
単純ですが、同じ5人の退職でも、母数が変われば率が大きく変わってきます。採用人数(母数)が少ないところほど、1人辞めた時のインパクトが大きくなってしまいますね。
1名の退職で考えると
- 採用人数100人で1名退職すると、離職率1%
- 採用人数30人で1名退職すると、離職率3.3%
- 採用人数2人で1名退職すると、離職率50%
となってしまいます。
人数を多く採用している病院の方が、退職者が出る確率は高くなりますが、1人退職あたりの離職率への影響が少なくなります。採用人数が少なくなればなるほど、1名退職した際の離職率へのインパクトが大きくなります。
退職する理由は人それぞれですが、病気や家庭の事情等、やむを得ず退職する人も多く、採用人数の少ない病院でも運悪くそういう退職者が出る可能性はあります。
また、1年間の離職率を計算する場合、1年を1日でも超えて退職すれば、離職率に反映されません。
離職率に影響が出ない退職のさせ方
新卒ナースの離職率は、一般的には1年以内の退職者数で算出されることが多いですが、この離職率に影響が出ないように退職の引きとめ、引き伸ばしを行ないます。
1年を1日でも過ぎて退職すれば、離職率にカウントされないわけですから。
本人はすぐにでも辞めたいと申し出ても、「とりあえず4月まで頑張ってみよう」とか 「年度内の退職は受付できない」「今は人手不足なので4月の新入職が入ってきてからにして」等と説得し、看護部長や師長、人事担当レベルで退職を引き伸ばしているのです。
また、病気などで退職せざるを得ない状況に陥ったとしても、しばらく病気休業として、「休職扱い」にして退職時期を引き伸ばします。
そうすれば、退職率に換算されないわけですね。
上記のような対策も、ある意味企業努力かもしれませんが、、でも、離職率ってあんまりアテにならないんですよね。
離職率0%なんてあり得ない?
時々、大量採用している病院が、離職率0%!と大きく掲げている病院がありますが、離職率0%なんてまず有り得ないと思っておいた方が良いです。
小規模の採用人数が少ない病院であればあり得ますが、20人~100人規模の看護師を採用している病院であれば、十中八九、数名は退職します。
人事をしていると本当によくわかるのですが、毎年のように、様々な理由で退職者が出ます。
理想と現実のギャップ、病気やアレルギー、怪我、針刺し事故などインシデント、自信喪失、家庭の事情、男女トラブル、人間関係、教育体制への不満、通勤が遠い、結婚・妊娠、など・・・・
想像以上にいろんな理由の退職者が出るんです。
でも、それで成り立っている業界なのですよね。だから毎年数十数人~100人規模の採用が必要なのです。
病院は、機能や施設基準を維持するために、多くの看護師が必要不可欠であり、かつ、その大半が女性、さらにストレスの多い職業であり、どこに行っても仕事ができる職業(転職しやすい)、退職者・転職者が多くなる要素が一杯なんですね。
離職率は、表向きの数字に騙されないようご注意ください。
大事なのは、退職理由や2年以内の退職者数、一番良いのは働いている人たちの生の声を聞くことです。現役で働いている看護師さんの話を聞くことです。病院見学等の際に、例えば、出身校の先輩などが居るか聞いてみると、お話しさせてくれる可能性がありますよ。
インターネットの口コミや2ch的なサイトの情報は気にしない
ここで注意してほしいのですが、生の声を聞くというのは、今そこで働いている人の声であって、退職した人の声ではありませんよ。
特に、退職した人のネット書き込みや2チャンネル的な掲示板サイトの情報は参考にしない!
そういう場所は、自分の退職を正当化したい人のネガティブな書き込みが多く、そういう人達の溜まり場になっています。
自分が辞めたことを後悔しないように、前職の悪いところを見つけて(ある意味前向きに)次の職場を探すものです。
そして、逆に今、楽しく働いている人、不満なく勤務している人は、わざわざそういうサイトに行って書き込みまでしませんよね。
退職者の偏った意見やネガティブな情報に流されないようくれぐれもご注意ください。
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