看護師の離職率に関するニュースがありましたので、取り上げさせて頂きます。
神奈川県立病院機構が看護師の離職率を半減
キャリアブレイン社のCBニュースによると、神奈川県立病院機構が「新人教育制度の充実」と「離職理由の分析」等を行ない、新人ナースの離職率を半減させたとのこと。
神奈川県立病院機構は、下記の県内5つの病院を持つ地方独立行政法人です。
具体的な施策内容までは分からないですが、気になりますね。
オフィシャルフェイスブックページも公開
また、離職防止策と並行してフェイスブックページの運用や修学資金の貸し付け制度の導入などで積極的な採用を行ない、140人以上の新卒ナース大量採用に成功。今年も前年同様の職員数を確保しているとのことです。
離職率が半減して、さらに、大量採用しているので、看護師の数が大幅に底上げされますね。
▼神奈川県立病院機構フェイスブックページ
修学資金の貸し付けがキモ?
私的な見解では、修学資金の貸し付け制度が大きなポイントかなと思っています。
いわゆる奨学金ですね。
最近は、かなりの高額の奨学金や就職支度金を支給している病院が増えています。
同機構についても、月額5万円(助産師は8万円)の奨学金を無利息で借りることができ、就職後に貸し付けを受けた期間と同期間勤務すれば、返済が免除されるそうです。
いわゆるお礼奉公ですね…。
学生や親御さんにっとってはとてもありがたい制度です。
就職後はお礼奉公となるので、貸付を受けた看護師さんはお礼奉公の期間を全うするまで辞めずに頑張らないといけません。途中で退職しちゃうと返金義務が発生するからです。
そもそも離職率とは?
一般的に言われる離職率とは、「ある時点で在席していた職員数のうち、一定期間後に退職した人の割合」を数値化したものです。
病院で使われる離職率は、「新人が入職した日から1年以内に退職する率」を数値化しているところが多いです。
計算方法としては、
1年以内の退職者数 ÷ 期初の入職者数 × 100(%)
そもそも、離職率の計算方法は定義があいまいとなっており、法律でこれと言って定義されているわけではありません。ですので、業界や企業によって算出方法が異なります。
厚生労働省の雇用動向調査で使われている離職率の計算方法は、下記のとおり。
離職者数 ÷ 1月1日の常用労働者数 × 100(%)
しかし、一般企業で多く使われている離職率の計算方法は下記のとおり。
一定期間中の退職した人数 ÷ 起算日に在籍していた人数 × 100(%)
「一定期間」にも特に定義がないため、例えば、過去3年間の離職率を研鑽する場合、
3年前の4月1日の在籍人数が30人、3年間で6人が退職したとすると、
6人 ÷ 30人 × 100 = 20%
となります。(この場合、年度の途中の入社数は除外して計算します。)
これを期間1年で計算するなどして、離職率を低く見せることができます。
最初の1年間は1人しか辞めなかった場合、
1人 ÷ 30人 × 100 = 3.3%
となります。
意図的に離職率を低く計算し、働きやすい職場とてアピールすることもできますね。
また、1年間の離職率を計算する場合、1年を1日でも超えて退職すれば、離職率に反映されません。
なので、実は、離職率の数字はアテにならないんですね。大量に辞めてしまってバカ高い離職率になっても、バカ正直に公開している病院はないと思います。
奨学金採用が多い病院は離職率が低くなる
奨学金の貸付を受けて就職する看護師さんの多くは、1年~3年間のお礼奉公があります。なので、なんとか1年~3年は辞めずに頑張りますよね?
そうすると、自動的に離職率の数字も低くなり、新人が定着しているように見えるわけです。
新卒ナース大量採用は時代遅れ
毎年100人規模の新人を大量採用していると、教育研修の面でなかなか行き届かないのではないかと思います。それだけ多くの新人さんが一気に入職するわけですから、個々の能力に応じたきめ細やかな研修やフォローは出来ないと思うんです。
そして、機構の看護師総数が1507人!(2012年4月)
すごい人数ですね。
そして、2012年4月~2013年3月末までに166人の看護師が退職しているとのことです。
2012年度の新人の離職率は5%に半減したとのことですので、新人さんは7名程しか退職していないことになりますが、
退職総数166名-新人7名=155名 は、2年目以降の看護師の退職数と言うことです。
2年目以降~ベテラン層のナースが150名程退職してということになるので、中堅看護師への負担が大きくなっている恐れがありますね。
同機構の発表では、引き続き看護師の定着対策と新卒看護師の指導方法に工夫を重ね、中堅職員の負担軽減などを図る必要があるとのことです。
やはり、毎年の新人採用での大量補充は時代遅れかと思います。新人研修の充実 や 福利厚生の充実はもちろん、定期的な中途採用と既卒ナースのフォロー体制の充実を図るなど、多角的に対策を講じるとが必要かと思います。
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